ディズニープラスで限定配信された「チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ」を観た。
アニメシリーズの「チップとデールの大作戦」をちゃんと見てないこともあり、配信前にあまり情報を入れてなかったが、公開後Twitterのポツポツ言及されていて、「へえブラックジョーク系なんだ~!一応見てみなきゃな…」ぐらいの気持ちで見てみた。
チップ達が2Dアニメーションなのに対して、デールだけ3DCGになってる画像見ただけでなんやねん、って感じだったけれど、本編はもっとド強烈。
以下、感想みたいなものをつらつらと。
ここから先、ガッツリネタバレを含むのでご注意ください。
キャラクターはあくまでも役者という設定
本作は「ロジャー・ラビット」同様、トゥーン*1が実社会に存在していて、我々が知っているトゥーンたちの姿は役者として彼らが演技している姿という設定で話が進んでいく。
というわけでチップとデールは学生時代からの友人で、2人(2匹というべきか?)の冠番組「チップとデールの大作戦」で成功をおさめたものの、デールが自身だけが主演シリーズの話を引き受けたことをきっかけに番組が打ち切りとなり、2人は離れてしまっている。
デール主演シリーズもうまくいかず、チップは保険の営業マンになり、デールは過去の栄光を引きずってのらりくらりと生きている、というところから物語が始まる。
とにかくレスキューレンジャーズはチップとデールをはじめとした役者たちが演じていた過去の番組なのである。
ちなみにチップもデールも演技の時と素の時で声が違う、ということになっている。あの可愛らしい2人の声はあくまで演じるときに作っている声なのだ。でもガジェットは素でもあの声だった。
チップとデールも、そして重要な役どころのピーターパンも、かつて人気俳優だったが今となっては…という役どころなのが切ない。
確かに新作アニメーションはないけれど、パークでもグッズ展開でも現役の人気キャラクターなんだけどなあ。
数秒に1度はカメオ出演
とにかくお腹いっぱいなぐらい見たことあるキャラクターたちがもりもり出演する。
三匹のこぶた、スクルージおじさん、リトルマーメイドのフランダー、美女と野獣のルミエール、ジャングルブックのバルー(超実写のほう)をはじめとするディズニーキャラクターたち、
いまやディズニーの子会社となった20世紀フォックスのシンプソンズのキャラクター、ディズニーチャンネルでも放送されていたマイリトルポニーたち、
ソニック(実写のボツになったデザインをさらに怖くしている)、ひつじのショーン、Peppa Pigなど、もはやディズニー何も関係ないキャラクターたち、
そしてまさかのメリルストリープ(トゥーンっていうか実在の女優さんだよ!?)
…などなど、もはやカメオ出演してないシーンを探すほうが無理なんじゃないか、すべてのカメオ出演を把握できる人なんていないんじゃないか、という勢いでずーーーーっと誰かがカメオ出演している。
ロジャーラビットではなんかスペシャル感というかゲスト感をもって、バッグス・バニーやベティちゃんなど他社キャラクターが出ている印象があったが、もはや今作はそんな扱いで良いの⁉とびっくりするような出演である。
シュレックなんて売れ残りのボディソープのボトルとして登場したうえに、ドロドロに溶かされて再利用されているからね。
いちばんおもしろいなと思ったのが、「不気味の谷」のシーンで実写版キャッツが登場するところ。
不気味の谷について「2000年代前半のリアルだけどなんか違うCGキャラクター」といった説明がされていたと思うのだが、実写キャッツは2019年公開だから…。
ALW*2も実写キャッツの出来はさんざんネタにしているし、もう実写キャッツは何言ってもいい枠なのかな…。
ストーリーの骨格は王道
カメオ出演が忙しいわ、ブラックジョークがなかなかきついわ、とかなりカオスな作品なのだが、ストーリーの主軸はかなり王道。
かつて人気バディだった2人の関係が破綻し、今となっては1人は地道に働き、もう1人は過去の栄光に縋りながら、まじわることもなくばらばらに生きている。
かつての共通の友人が誘拐されたことをきっかけに、2人は再び協力(?)して悪に立ち向かっていく。
意外な人物が敵方だったこともあり難航するものの、なんとか悪を倒し、共通の友人を救い、2人は仲間・絆を取り戻す…。
キャラクター名を伏せて、あらすじを辿るとかなり王道なストーリーである。
骨格がシンプルだったからこそ、カオスな部分をしっかり追うことが出来て、バランスがとれているなあと思った。
これで話も捻ってたらとても頭が追い付かない。
改めて思うロジャー・ラビットのバランス感覚
設定といい、実写とアニメーションの融合といい、かなりロジャー・ラビットを意識した作品となっている。
なんならロジャーも出てるし。
だからこそ、ロジャー・ラビットの設定やバランス感覚が改めて素晴らしいか、鑑賞後にゆっくり考えていると認識させられる。
ロジャー・ラビットでは、トゥーンは基本的に不滅で上からピアノが降ってきたぐらいでは死なないが、ディップをかけられると消えてしまうという設定がある。
そしてベビーハーマンはずっと見た目は赤ちゃんのままで、中身はおっさんだがベテラン俳優として活躍している。
今作では、ピーターパンは確実に年齢を重ねているがロストボーイは映画当時から見た目の変わらないけどどうして?、舞台となっている時代と公開時期がうまく合わないよ?、チップとデールもピーターパンも2022年現在グッズにパークにと大人気キャラだけど彼らはどこに?という疑問などが浮かんでくる。
トゥーンの不老(?)不死設定はセーフティネットだったのだと思う。
アニメーションと現実が同居して実際に生きているという無理くり設定をそれでもリアリティを持たせるためには不可欠だった。
そしてロジャー・ラビットは原作あり作品とはいえ、基本的に物語を動かすのはオリジナルキャラクターだし、たくさん登場するカメオ出演キャラクターたちも役者という設定ながら出演作品でのイメージそのものなキャラクターづくり。
一方こちらは、永遠の少年が諸悪の根源みたいなおじさんになっていたり、フランダーはじめ多数のディズニーキャラが借金に溺れたことにつけこまれて海賊版に出されていたりとあんまり直視したくない末路が描かれている。
別にディズニーにいつもキラキラしてくれなど望んでもいないし、現実に向き合ったり、ブラックジョークで笑わせてくる分には歓迎だけれど、わざわざ今まで築いてきたそのキャラクターの魅力を自分の手でぶっ壊すことはないと思っている。
今作に限った話ではない。
だって2次創作ではなくてあくまで公式なんだから。
とはいえ、鑑賞している最中は、画面で起こっている要素が多すぎて追うだけで忙しく、こんな不安やさみしさを感じる暇すらなかったけれど。
さいごに
みんなに能天気におすすめすることはちょっとできないけれど、小ネタの宝庫で見ていて忙しく、よく権利関係乗り越えたなと感心してしまう作品。ブラックジョークもなかなかに効いている。
映画館ではなくディズニープラス独占配信作品としてこういう作品があるのは面白い。