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さよならミニスカート 1巻&2巻

少し前、twitterとかでも話題になっていたこちらの作品

さよならミニスカート - 集英社 りぼん

連載が始まったころ異例、と大々的に広告が打たれていて、1話は公式で無料で読むことができる。

shonenjumpplus.com

読んでみたら気にならずにはいられなくなって、ものすごく久しぶりに漫画を買ったのが半年弱前ぐらい。

遅くなってしまったが、感想をまとめておこうと思う。


ネタバレを目的とした記事ではありませんが、物語の内容に触れます。まだ読んでない方はご注意ください


あらすじ

公式サイトやAmazonをどんなに確認してもあらすじといったあらすじが出てこないので、一応私の言葉で簡単にあらすじを


高校で唯一スカートではなくスラックスの制服を着用している女子生徒、神山仁那(かみやまにな)

彼女はかつて大人気アイドルPURE CLUBの元センター 雨宮花恋(あまみやかれん)として活動していたが、握手会で傷害事件に遭ってしまったのをきっかけにアイドルをやめ、黒髪ストレートロングだった髪の毛もバッサリと切り、本名の神山仁那として、アイドルだった過去を隠しながら誰も知り合いのいない町で生活していた。
けれども傷害事件の犯人はいまだに捕まっていない。

仁那のクラスメートで柔道部の堀内光(ほりうちひかる)は仁那がかつて雨宮花恋だったことに気づき、浮いた存在である仁那を気にかける。
堀内と話しているうちに、仁那はアイドルを夢見ていたころの気持ちを少し思い出して、堀内に心を開く。

しかし、クラスメートの男子から大人気なかわいいクラスメート 長栖未玖(ながすみく)は堀内のことが気になっているのか、仁那のことが気に食わないようで…


少女漫画としては「異例」のジェンダーなどの問題を強く内包した社会派作品だ。

このまんがに、無関心な女子はいても、無関係な女子はいない。

どこまでも少女漫画だ

こんな記事が出ていたり、

www.cinra.net

連載開始前から宣伝されていたりと、
りぼん連載作品なのに攻めてるとかなり話題になった。


2話では痴漢について取り上げられているし、(りぼん読者世代で痴漢ってピンとくるんだろうか…?)
そもそもの傷害事件はAKBののこぎり事件(AKB48握手会傷害事件 - Wikipediaを思い出さずにはいられない。


けれども実際に読んだらどこまでも少女漫画
もちろんいい意味で

確かに現実社会の社会問題も取り入れられているけれども、王道少女漫画の枠の中で物語が進んでいる。

線が細くてでもつよくて優しい男の子とふとしたきっかけで距離が縮まる主人公、そしてそんな彼のことが好きでついつい嫌がらせをしてしまうクラスの人気者女子…

そして、すごく繊細で瞳がキラキラした絵柄

こういった王道少女漫画の要素がいっぱいだからこそ、社会へのメッセージがより引き立っているんじゃないかなと思う。


「ブスに限ってチカン怖いって騒ぐからさーっ」
「説得力無ェんだよ そんなの触られて当たり前」

ってはやし立てる男子たち、

「女使って男釣って儲けてんだから恨み飼われて当然だろ いやなら最初からアイドルなんてやるなっつーの!」

といった心無い世間の声

どれもすごくリアルで。
少女漫画のストーリーという一種のファンタジーの世界だからこそ、強烈に効いてきている。

特に

「人を傷つける奴が居座って 傷つけられた方が出ていかなきゃいけないなんておかしいですから」

というセリフには、読んだタイミングもあってか、どうしてもNGT48の事件とその対応を思わずにはいられなかった。


そして王道少女漫画だからこそ、いちばん心に刺さるのは相手役の光の描写かも知れない

王道少女漫画のセオリー通り、彼のキャラクターには現実味がないというか、完璧すぎるというか、男同士のつるんでる感じや性欲が感じられなすぎる。
現実だったら不自然なくらいに。

けれども、2巻でいいお兄ちゃんだったんだ、って回想するシーンがえげつなさすぎて…
妹に対する教師のひどいセクハラが発覚したとき、どうして言ってくれなかったんだと妹を責めると

「しょうがないよ だってお兄ちゃんは男だから」

と。
それに対して

「良いお兄ちゃん」ぶる俺の横で きっと六花*1は冷めた目で見てたんだ 「男だからしょうがない」って…

ここの描写がえげつなさ過ぎる。

ここのシーンまでほんとうに光はただの少女漫画の王子様でどこか非現実感があった。
妹想いで、女の子を絶対に傷つけない、悪い意味での男性のノリとも一定の距離を置いた王子様。

それに対して「良いお兄ちゃん」ぶっていただけで、妹そのものには興味がなかったと現実を打ち付けていったのが、えげつなさ過ぎる。
いやまあそうかもしれないけど、それ本人に言わせてしまうのか…とぶっ刺さってしまった。

私の中には、仁那も未玖も辻ちゃんもいる

最初に読んだ時は、仁那ちゃんに気持ち入れすぎちゃってなんかちょっと辛くなっちゃって。
誰かが悪いとかじゃないのにどうしてこんな社会なんだろうってちょっとだけ思ったりして。

あと辻ちゃんの登場のさせ方がうますぎて。
痴漢のエピソードもそうなのそうなのってなったし、そんな彼女が未玖がつらかったあそこに居合わせた唯一の人で、そして最後にクラスメートの男子に啖呵を切るというのがもう、なんというか演出というか設定が巧い…

共感というか、あーって悶えつつも、自分は抵抗をはっきり示せないタイプなので、彼女たちがちょっとまぶしい。


一方で、未玖の名誉男性っぷりにはイラつくと同時に違和感も感じてしまった。
私や私の周りにいた人たちは、高校生の時点でこんなにゆがんだ世界なりの生き方を極められるほど、認識できていた?
なんかどこか人生3週目みたいな諦念に達してるんじゃないかなってぐらい、男と女という部分に関して子供っぽさがなさ過ぎる。

でも改めてゆっくり読み返してみると、わたしにも未玖みたいな部分はあることに気づいた。

作品中で触れられていたように、戦うより逃げるほうが楽っていうのもあるけれども、
それ以上に、文句言ってないでそれに合わせて、むしろ利用していくぐらいの勢いで生きたほうが賢いんじゃないかって思ってしまうこともある。
(もちろん思ってもそんなに簡単に開き直れないけどね)

でも、この利用していくぐらいの勢いで生きたほうが賢い、ということについて、未玖に

私は何も与えてやらない この世界を利用して 奪う側に立ってるだけよ

と言わせたのはえげつなさすぎるし、(だって彼女は15歳やそこらの高校生だよ!?しかもりぼんで)
それに対して仁那が

何が…「奪う側」なの 長栖さんはいつだって 奪われてばっかりじゃない!!

と返したのが、ほんとうに、もはやえげつないをこえて、むごい。


改めて自分の身を振り返ってみると、この物語はフィクションゆえに、それぞれの登場人物の役割がはっきりしているけど、現実の私は彼女たちの悪いところどりしてるみたいだなとすら思ってしまった。

さいごに

伏線もバリバリはってあったり、謎がどんどん生まれてくるし、最後も続きが気になる!どうなるの!?って感じだったので、3巻が待ち遠しい。
にしても月刊誌ゆえに次の巻が出るまでがすごく長く感じられる…。

*1:りっか 光の妹