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【マイ・フェア・レディ 感想】ヒギンズもフレディもちょっと遠慮したい

マイ・フェア・レディ観てきた。

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日本初演から半世紀何度も再演を繰り返しているものの、今までご縁がなく、 オードリー・ヘップバーン主演のかの有名な映画版も流し見ぐらいしかしたことがなく、
というわけで、今回マイ・フェア・レディデビューとなった。

いつものごとく、感想を。

ガッツリネタバレ含みますのでご注意ください。

キャスト

まずはキャストさんを紹介しつつ、簡単だけど感想を

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イライザ・ドゥーリトル:神田沙也加

神田沙也加ちゃん(私よりかなり年上なのは承知で、"ちゃん"と呼びたくなってしまう彼女)、ミュージカルを中心に大活躍してることはよく知っていたけれど、実は舞台で生で見るのは初めて

歌は不調だったのか正直ちょっと危ういところもあったのだけれども、なんといっても歌声がいい
ヒロイン声というのだろうか?つややかでかわいい素敵なお声

なによりも彼女自身がマイ・フェア・レディが好きで楽しいっていうのが伝わってくるような舞台だった。

ヘンリー・ヒギンズ:寺脇康文

あとでちゃんと語りますが、「ヒギンズクソ」って上演中ずっと思っていた。
時代背景的に花売り娘で身分の低さを見下している前半がくそなのかなと思ったけど、ラストまでくそだなと思った。。。。

これは演じている寺脇さんの演技力が高いことの裏返しでもある。

ピッカリング大佐:相島一之

ピッカリング大佐が、この作品の扱われ方をラブコメっぽくしている一番の要因なんじゃないかしら、というぐらい大事なお役。

コメディの感じが楽しく、ヒギンズ教授との相性もばっちり

ルフレッド・ドゥーリドル:今井清隆

イライザの飲んだっくれ父

娘に金をせびるクソおやじの役だけれど、1曲まるまるメインミュージカルシーンがあるんだよね。
こういう場面に関しては今井さんについていけば大丈夫的な頼もしさがある。

フレディ:前山剛久

美形でかっこいいんだけど、役作りがなかなか面白かった。

悪いやつではないんだろうれど、結婚はしたくないかも!なフレディだった

ピアス夫人:春風ひとみ

大変しっかりしたメイドさん

きちんと言葉で伝えることのできる人だなあという印象だった。

ヒギンズの母:前田美波里

主演神田沙也加しか把握してないレベルで、あんまりキャストは確認せず観に行ったのだけれど、ヒギンズ母だけは観ただけで心が「前田美波里さんだーーーーーー!」って叫んでた。
存在感がレベル違い

強く、美しく、たくましい貴婦人でございました。

ミュージカルの古典として輝く

ブロードウェイでの初演は1956年、1963年には日本で初のブロードウェイミュージカルとして上演され、半世紀以上何度も再演が繰り返されている名作

きちんと観るのは初めてだったけど、それなのにすでに耳になじみのあるメロディー

I Could Have Danced All Night

I Could Have Danced All Night

  • Marni Nixon & Mona Washbourne
  • ミュージカル
  • ¥255

とくに有名なのは「踊りあかそう」だけれど、わたしは「だったらいいな」のうっきうき感が大好き!

Wouldn't It Be Loverly

Wouldn't It Be Loverly

  • Marni Nixon
  • ミュージカル
  • ¥255

競馬場や舞踏会といった華やかなシーンはもちろん、ヒギンズ教授の部屋やヒギンズ母のバルコニーなどどの場面も丁寧で美しいセットに衣装に見どころいっぱい。

そして昔の名作ミュージカル!といえば、アンサンブルを巻き込んだ、華やかなダンスシーン!
イライザ父が中心となったダンスシーンがあるけれど、あまりにも今井さんが頼もしすぎて圧巻!

とにかく華やかな舞台でミュージカルってこうだったなあとちょっとしみじみとするレベルだった。(今はいろんなミュージカルがあって、それはそれで素晴らしいけどね!)

ストーリーは…

ストーリーはnot for meって感じだったかなあ…。
価値観が古いのは大丈夫、シンデレラストーリーも大好き、だけれど本作はちょっときつかった…。

たぶんきつかったのは以下の点

  1. 差別的な表現は時代だなと飲み込んでも、ヒギンズの発言はもはや暴力だし、それが全編通じてずっと続く
  2. イライザはかなりはっきりとそういう価値観にNO!を突き付けているのに、最後まで話を聞いてもらえることはないのにそれでもヒギンズとイライザがラブっぽく終わる

まあ、はっきり言ってしまえば、貧民や女性への差別的な発言が続く。
令和の今見たら訛りの何がそんな悪いねん…とか、そんなテンプレートな女性差別発言せんでも…と思ってしまう。
まあそれでも、そういう時代だったと受け止めるのが正解なんだろうが、ちらっとそういう発言があるだけならまだしも、正直差別発言が連続しまくっていて気が滅入ってしまった。

ピッカリング大佐も、イライザの人生なんてみじんも考えず賭けてしまうぐらいたいして人間としては扱っていないはずなのに、それでもきちんとイライザに直接暴言を吐いたりはしないのでなんかいい人な気がしてくる。いやヒギンズ…。

そしてイライザは自分が到底人間として大事にはされていない状況にわりとはっきりNO!を突き付けている。
あそこまではっきりと自分の扱われ方を認識し、言語化して抵抗できるのはなかなか難しいことなのにやってのけるのはかなり賢い。

あそこまではっきりと言葉にできているのに、まったく理解できないし、するのに必要な理解力のないヒギンズがだいぶしんどい。
あんなにはっきり教えてもらってわからなかったら、もうどうしようもないよ。

I've Grown Accustomed To Her Faceの歌詞とかもうほんとになにも伝わっていないんだなと突き付けられる。
それなのにその直後にイライザが帰ってきてハッピーエンド!みたいな空気にされてもちょっとイライザなんで帰ってきた!?となってしまう。

イライザが「貧しい生まれだけれど運よくレディとして育ててもらえて嬉しいハッピー!キラキラ」って感じで自分の扱われ方やこれからの人生に対して特に何も思ってなくて、それで恩師と愛で結ばれるなら良いのだけれど、彼女は決してそんなにキラキラの世界で生きているわけではないという描写がはっきりある。

逆に賭けを通じてもう下町には戻れないが、言葉だけではお金にはならない、もうヒギンズの元に戻る以外生きる道がない…これは結婚というより生きるためにしなくてはならない仕事なんだ…とヒギンズのもとに戻るならまだ理解はできるけれど、それってかなりバッドエンドだしどうなの?という問題が。

ちょっと筋が通っていない感じがしてしまう上に、あんまりイライザ幸せじゃないよね?というもやもやがどうしても残ってしまった。

舞台版は原作となった「ピグマリオン」のセリフなどを残しつつ、最後はヒギンズの元に戻るように改変していると聞いたことがあるので、どうしてもちぐはぐ感が残ってしまっているのかな。
ピグマリオン」は買ってみたので今度読んでみようと思ってる。

原作者は、イライザはフレディと結ばれると答えたそうだけれど、今回の公演を見る限りフレディもイライザのことを育ちが違うゆえに違う感覚を面白がる感じがどうしても動物園で檻の外から面白そうに珍獣を眺めてる感覚に近いんじゃないか?と感じられて、なんかどうなの?って思ってしまった。
今回演じた前山くんがそういう役作りをしていたり、そもそもそういう演出だっただけかもしれないけれど(今回初マイ・フェア・レディなのでほかの演出・役者を知らないため)

最後に

ストーリーこそちょっと肌に合わなかったけれど、もはやミュージカルの古典といってもいいほど押さえるところをきちんと押さえた華やか作品だった。

こんなご時世だけれども、きちんと完走できますように!