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ハリー・ポッターと賢者の石 スネイプの論理パズルを実際に解いてみる

お題「#おうち時間

久しぶりにハリーポッターシリーズ第1作目の「ハリー・ポッターと賢者の石」を読み返してみている。

この作品の終盤、ハリーたちはホグワーツの先生たちが賢者の石を守るために仕掛けた試練に挑む。
そのうちスネイプ先生が仕掛けた試練は魔法ではなく、論理パズルである。

ハリーたちが挑むものはシリーズ通じて基本的にはマグルである我々にはどうにもできないが、これだけは我々でも解決できるかもしれないとおもって挑戦してみた。

スネイプの出した論理パズルは?

ハリー・ポッターと賢者の石がある人はぜひ手元に本を。
16章仕掛けられた罠/Through the Trapdoorの後半部分、マクゴナガル先生のチェスをクリアして扉を開けたところ*1から見て欲しい。

読んだことない人、手元にない人のために簡単に状況を説明すると、
形の違う7つの瓶が横一列に並んでいて、その横に手紙が添えられている。
そして部屋の前も後ろも魔法の炎で阻まれて進むことも退くことも妨げられている。

手紙の内容は要約すると以下の通り。

  • 7つの瓶のうち
    • 1つに前進するのに必要な薬
    • 1つに後ろに戻るのに必要な薬
    • 2つにはお酒
    • 残りの3つには毒薬
    がそれぞれ入っている。
  • 中に何が入っているかには4つのヒントがある。
    1. お酒入りの瓶の左の瓶は必ず毒が入っている*2
    2. 両端は種類が異なるがどちらも前進の薬ではない
    3. いちばん大きい瓶と一番小さい瓶はどちらも毒入りの瓶ではない
    4. 左から2番目と右から2番目の瓶は双子の薬が入っていて中身は同じ味

解いてみる

挿絵や1列に並んだ瓶の記述がないため読者は瓶の大きさに関する情報がない。
そのため瓶の大きさに言及しているヒント3を使わずに解けるところまで解いてみよう。

ここから先は記述を楽にするために、

  • 前進するのに必要な薬が入った瓶→前
  • 後ろに戻るのに必要な薬が入った瓶→後
  • お酒が入った瓶→酒
  • 毒薬が入った瓶→毒

と1文字で表すこととする。

まずはヒント4から

まずはヒント4から。
左から2番目と右から2番目の瓶は双子の薬が入っていて中身は同じ味だそう。

この双子という言葉の解釈が厄介で、左から2番目と右から2番目の瓶に入っているものが同じであることを示しているのに過ぎないのか、それともそれ以上の意味があるのか…。

1つしかない前や後は絶対に異なるとして、2つでペアの酒と限定しているのか、3つある毒も含まれるのかどうかが私には判断しかねる。

つまりこのヒントで、
?酒???酒?と確定するのか、
?毒???毒?の可能性もあり得るのか

ただ同じものが入る、というだけでなく双子といっているので、もう一つある毒ではなく酒と考えるのが妥当かなあ。

次はヒント1

続いてヒント1を見てみる。
酒の左は必ず毒。一番左が酒ではないことはこの段階で確定する。

ヒント4で、?酒???酒?と確定したと考えれば、
酒の左は必ず毒なので、毒酒??毒酒?と確定する。

?毒???毒?の可能性も考えるとかなりややこしい。
酒の左は必ず毒だからといって、毒の右は酒とは限らない。なぜなら、毒は酒より1つ多いからだ。
3つの毒のうち2つの右隣りは酒だが、後の1つの右はなにかわからない。

けれども、?毒???毒?のとき一番右が毒である(つまり?毒???毒毒)とすると、このヒント1を満たすことが出来なくなってしまう。
したがって?毒???毒?のとき一番右は毒ではないことがここでわかる。

そしてヒント2を使う

最後はヒント2を使う。

ヒント1と4で、毒酒??毒酒?と確定したと考えると、?には毒前後がそれぞれ入る可能性がある。
ヒント2をみてみると、一番右端の?に入るのは、前ではないし、両端は種類が異なるということは毒でもない。
つまり一番右は残る後で確定する。
そして残る左から3番目と4番目の?に毒と前のいずれかが入る。

ヒント4で双子の薬=酒と確定しないとすれば、これに加えて?毒???毒?の可能性も考えなくてはいけない。
?に入り得るのは、酒が2つ、毒が1つ、そして前後。

これまでの考察で左端に酒が入らないことと右端が毒ではないことが確定している。
さらにヒント2の内容も考えると、左端と右端の組み合わせとして考えられるのは、
左端が毒、右端が後
左端が毒、右端が酒
左端が後、右端が酒
の3パターン。

左端が毒で右端が後、つまり、毒毒???毒後のとき、
ヒント1を満たすことが出来ない。
したがって毒毒???毒後の可能性はない。

左端が毒で右端が酒、つまり、毒毒???毒酒のとき、
ヒント1より毒毒酒??毒酒が確定し、残りの2つの?には前後が入る。
よって以下の2通りが考えられる。
毒毒酒前後毒酒
毒毒酒後前毒酒

左端が後で右端が酒、つまり、後毒???毒酒のとき、
ヒント1より以下の4つまで可能性が絞られる。
後毒酒毒前毒酒
後毒酒前毒毒酒
後毒前毒酒毒酒
後毒毒酒前毒酒

以上の結果をまとめると

ここまでの結果をまとめる。

ヒント4の"双子の薬"によって、左から2番目と右から2番目が2つしかない酒と確定するとすると、
毒酒毒前毒酒後
毒酒前毒毒酒後
のどちらか。
後は一番右端で確定だが、前は左から3番目か4番目かのどちらかである。

ヒント4の"双子の薬"は左から2番目と右から2番目が同じ種類の薬が入っていると示してるにすぎないと解釈すれば、上記の2つに加えて、
毒毒酒前後毒酒
毒毒酒後前毒酒 後毒酒毒前毒酒
後毒酒前毒毒酒
後毒前毒酒毒酒
後毒毒酒前毒酒
の可能性も考えられる。
後が左端で、前は左から3番目、4番目、5番目のという可能性が追加される。

つまり、ヒント3を使わなければ、答えを確定させることが出来ない。

大きさがわかれば解けるはずと考えると…?

この論理パズルだが、解けない問題を作ったところで意味はないので、ヒント3を使うことで解けるはずである。
すなわち、瓶の大きさという情報が加わることでこの問題は前後の位置が確定できるはずである。

もし双子の薬=酒と確定したと考えられる、
あるいは左から2番目か右から2番目に、最大か最小の瓶があれば、
ヒント1, 2, 4で毒酒??毒酒後で、?に前か毒が入ることが確定する。
したがって、一番右が後なのが確定で、
左から3番目か4番目に最大か最小の瓶があればそれが前
とわかる。

双子の薬=酒と確定できず、左から2番目も右から2番目にも、最大か最小の瓶がないときを考えてみる。
最大か最小の瓶の置き方で前後が一つに定まるパターンはあるのだろうか。
最大か最小の瓶の置き方の組み合わせは(7-2)C2=10通り(最大か最小かを区別しないとき)しかないので、これぐらいならしらみつぶしにしても問題なくできそうなのでやってみる。
結論からいうと、このとき最大か最小の瓶の置き方で前後が一つに定まるパターンはない

実際にやってみるが、長くなるのであんまり興味ない人は飛ばしちゃってください。ここをクリックして飛ばす

飛ばさなかったみなさん。お付き合いください。

左側から数えて1, 3番目が最大と最小の瓶だったとき、
後毒酒毒前毒酒
後毒酒前毒毒酒
後毒前毒酒毒酒
の3パターンが考えられる。
これでは前の位置が特定できないので問題が成立しない。

左側から数えて1, 4番目が最大と最小の瓶だったとき、
後毒酒前毒毒酒
後毒毒酒前毒酒
の2パターンが考えられる。
これでは前の位置が特定できないので問題が成立しない。

左側から数えて1, 5番目が最大と最小の瓶だったとき、
後毒酒毒前毒酒
後毒前毒酒毒酒
後毒毒酒前毒酒
の3パターンが考えられる。
これでは前の位置が特定できないので問題が成立しない。

左側から数えて1, 7番目が最大と最小の瓶だったとき、
後毒酒毒前毒酒
後毒酒前毒毒酒
後毒前毒酒毒酒
後毒毒酒前毒酒
の4パターンが考えられる。
これでは前の位置が特定できないので問題が成立しない。

左側から数えて3, 4番目が最大と最小の瓶だったとき、
毒毒酒前後毒酒
毒毒酒後前毒酒 の2パターンが考えられる。
これでは前後の位置が特定できないので問題が成立しない。

左側から数えて3, 5番目が最大と最小の瓶だったとき、
毒毒酒前後毒酒
毒毒酒後前毒酒 後毒酒毒前毒酒
後毒前毒酒毒酒
の4パターンが考えられる。
これでは前後の位置が特定できないので問題が成立しない。

左側から数えて3, 7番目が最大と最小の瓶だったとき、
毒毒酒前後毒酒
毒毒酒後前毒酒 後毒酒毒前毒酒
後毒酒前毒毒酒
後毒前毒酒毒酒
の5パターンが考えられる。
これでは前後の位置が特定できないので問題が成立しない。

左側から数えて4, 5番目が最大と最小の瓶だったとき、
毒毒酒前後毒酒
毒毒酒後前毒酒 後毒毒酒前毒酒
の3パターンが考えられる。
これでは前後の位置が特定できないので問題が成立しない。

左側から数えて4, 7番目が最大と最小の瓶だったとき、
毒毒酒前後毒酒
毒毒酒後前毒酒 後毒酒前毒毒酒
後毒毒酒前毒酒
の4パターンが考えられる。
これでは前後の位置が特定できないので問題が成立しない。

左側から数えて5, 7番目が最大と最小の瓶だったとき、
毒毒酒前後毒酒
毒毒酒後前毒酒 後毒酒毒前毒酒
後毒前毒酒毒酒
後毒毒酒前毒酒
の5パターンが考えられる。
これでは前後の位置が特定できないので問題が成立しない。

というわけで、この結果から双子の薬=酒と確定できず、左から2番目も右から2番目にも、最大か最小の瓶がないとうまく答えが導き出されないことから

  • ヒント4で双子の薬=酒と確定して良く、左から3番目か4番目のどちらかに最大か最小の瓶が置いてある
  • 左から2番目か右から2番目に最大か最小の瓶が置いてあり、かつから3番目か4番目のどちらかに最大か最小の瓶が置いてある

という条件でこの問題は成立し、正解は

  • 1番右が後ろに進むのに必要な薬
  • 左から3番目か4番目のうち、最大か最小の瓶が置かれているほうが前に進むのに必要な薬

となる。

まとめ

個人的には双子の薬という表現がややあいまいなように感じるので、 ヒント4で双子の薬=酒と確定して良いんだけど、左から2番目か右から2番目に最大か最小の瓶が置いてあればいいなあと思った。
そうすれば自信をもって左から3番目か4番目の薬のうち最大か最小の瓶である方を前進するのに必要な薬と断定できる。

本に挿絵はないので、実際の瓶のサイズはわからないのだけれども、ハーマイオニーは一番小さな瓶が前進するのに必要な薬で、一番右端にある丸い瓶を後ろに戻るのに必要な薬と答えを導き出し、それが正解だった。

物語の数ページだけどここまで考えられて楽しかった!

*1:私の手元にある日本語版(新装版ではなく初版)だと417ページ

*2:日本語版は誤訳