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【ミュージカル フィスト・オブ・ノーススター 感想】北斗の拳がこんなにミュージカル向きだったとは

フィスト・オブ・ノーススターの初演が発表されたとき、「レミゼのキャストでまさかの北斗の拳ミュージカル化、音楽はワイホ」と驚いた。
とはいえ、北斗の拳の漫画もアニメもまったく触れたことがなかったため、チケットは買わずにいた。

開幕してみるとものすごく評判がよく、TwitterのTLを毎日のように賑わせていた。
再演したら次こそチケット取ろうと思っていたら、思っていたより早く再演のお知らせがあり、先日観てきた。

以下、原作ミリしらのしがないミュージカルファンの感想です。

以降ネタバレ含むのでご注意ください

ストーリー

二千年の歴史を誇る北斗神拳の修行に励んでいたケンシロウ(大貫勇輔)、トキ(小西遼生)、ラオウ福井晶一/永井 大)の三兄弟。南斗の里から来たユリア(平原綾香May’n)、そのお付きのトウ(AKANE LIV)とともに成長していく三兄弟の中から師父リュウケン(宮川 浩)は末弟のケンシロウを次の伝承者に選んだ。折しも世界を覆う核戦争によって文明社会は崩壊し、人々は弱肉強食の時代を生きることとなった。ケンシロウはユリアとの愛を育み共に荒廃した世界を生きていこうとした日、南斗のシン(植原卓也/上田堪大)にユリアを強奪され、胸に七つの傷を刻まれる。絶望の中放浪の旅に出たケンシロウは、たどり着いた村で出会った二人の孤児バット(渡邉 蒼)、リン(山﨑玲奈/桑原愛佳)と共に旅を続ける。一方ラオウ世紀末覇者・拳王を名乗り、世界を恐怖で支配しようとしていた。ケンシロウは女戦士マミヤ(清水美依紗)が治める村の用心棒レイ(三浦涼介)と共にラオウによって牢獄カサンドラに囚われたトキを救出するが、その後ユリアが失意の中でシンの居城から身を投げたことをラオウから知らされる。ケンシロウラオウとの闘いの末に壮絶な最期を遂げたジュウザ(伊礼彼方/上川一哉)をはじめとする愛すべき仲間や強敵(とも)たちの哀しみを胸に、世界に光を取り戻すべく救世主として立ち上がるのだった。
ミュージカル 『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』 | 【公式】ホリプロステージ|チケット情報・販売・購入・予約

ケンシロウ北斗神拳の伝承者としての王道な成長譚。
そこに兄弟愛、異性愛(両想いも一方的な想いもどちらも)、親子愛と愛が根底に流れているからこそ普遍的な物語となっている。

原作・アニメ共に全く見たことがなく、どこがオリジナル要素なのか全くわからないし、1度だけの観劇ですべてを理解できたとも思えない私が書くのも恐縮だが…。

キャスト

私が観た回のキャストはこちら。

メインキャストについて簡単だけれど感想を。
キャストの感想と役への想いごっちゃですいません。。。

ケンシロウ/大貫勇輔さん

とにかく大貫くんの身体能力がハンパない。
ムッキムキの肉体美も素晴らしいんだけど、それ以上に体の軽やかさが異次元。

大貫ケンシロウあってのアタタミュと聞くけどほんとにその通り。
シングルキャストなのは身体大丈夫なのかな?と心配になるレベル。

座長としての頼もしさ、少年的な魅力…いろんなものが詰まったケンシロウ

ユリア/平原綾香さん

2番目にクレジットされているもののいちばんよくわからないなーとなったのがこの役。
周りはユリアユリア💕いってるけれど、本人の想いや背景がイマイチつかみにくい。なんでみんなそんなユリアが好きなんや???

脚本の高橋亜子さんがインタビューで、

――『北斗の拳』はもっぱら男性の物語というイメージがありましたが、今回の台本では女性キャラクターたちが物語のカギを握っている…といってもいいくらい、重要なポジションにありますね。

「80年代の作品ということもあってか、原作は確かに“男性たちの物語”で、女性キャラクターたちは“男性の理想”としての女性像でした。そこを変えたいと思っても、世界中にファンがいる作品なので、大きくは変えられない。ではどこまでなら変えられるか、という話し合いを原作サイドと長く行いまして、少しずつ女性たちの意思を明確にしていきました」
『フィスト・オブ・ノーススター』脚本・高橋亜子インタビュー:“見どころしかない”舞台、誕生の予感 - Musical Theater Japan

と話しており、原作からまあそういうキャラなのかな。

とはいえ、北斗の拳を愛の物語として再構築している中で重要キャラというのはわかる。
平原綾香さんの歌手としてのスキルの高さ、歌のうまさがこの愛に説得力を持たせまくっていて素敵だった。

多くの人気ミュージカル俳優さんたちって、歌はめちゃめちゃ上手いことに間違いはないのだけれど、あくまで役の中の表現の手段としての歌の部分が強い。
(だからテレビで歌ってても意外としっくりこない、みたいなことが起こりがち)

一方であーやはめちゃめちゃミュージカルには出演しているけれど、あくまで歌手として歌を歌として歌い、役者としての表現というよりは歌手としての表現をのせてくる。
だからミュージカル女優としての彼女には異質感があって、正直ちょっと苦手意識すらあったのだけれど、ユリアという役にはむしろ合っていて、歌によって浄化される感じというか、救いを感じた。
彼女の歌手としてのスキル・表現の力がなせる業で、本当に当たり役だなあと。

ラオウ/福井晶一さん

ラオウはこの作品でいちばんカギを握るキャラだと思う。
ラオウが強くないとケンシロウの成長がわかりにくくなっちゃうし、心境の変化をしっかりだして最期の「我が一生に一片の悔いなし」に説得力がないとラストポカーンになっちゃうし…。

その点がしっかり表現されていて、馬鹿みたいに福井ラオウは強くて、人間ドラマとして面白い仕上がりとなっていた。

ジュウザ/伊礼彼方さん

ジュウザは2幕で突然出てきてぱっと敗北して消えるキャラで、原作未見なので正直いなくても話ほとんど変わならいとまで思ったけど、笑
かわいこちゃんたちに囲まれて歌うシーン*1はほんとに空気を持って行くよね~~~~。

アドリブもなんでもOKな自由な空気もこの作品では希少だったりする。

にしても世紀末(アタタミュ)とベトナムミス・サイゴン)の往復はどちらもなかなか重たくてすごすぎる。
初演キャストで再演出てない組はサイゴン組が多いので、むしろなんで伊礼さん出られるのか不思議。

こんなにミュージカル向きだったとは

愛と想いと

初演が発表されたとき、北斗の拳の漠然としたイメージと、ミュージカルのイメージがあまりにもかみ合わず、どうなるんだろうと思った。
実際に見てみると、ミュージカルとの相性がいいんだと思った。

漫画は絵という視覚的な部分、コミュニケーションになるセリフ、他の登場人物にはみせないけど読者に想いや考えを伝えるト書きなどの要素がある。

ミュージカルもダンスや身体表現、衣装やセットなどの見た目の部分やセリフなどの演技のほかに歌がある。
ミュージカルTVかなにかで井上芳雄さんがおっしゃっていたように、ミュージカルでは歌でセリフだけでなく、お客さんだけに伝える想いなども表現できる。

アタタミュはミュージカルの特性と漫画の特性がうまくマッチしていた舞台になっていた。

根底に「愛」という一本道が流れていることで、気持ちの入り込みもバッチリ。
なんてったって愛と音楽の相性の良さは折り紙付きだものね。

いろんな愛や想いが交錯していく物語とミュージカルの相性の良さたるや。
ワイルドホーン氏の音楽もさすがというか安定感というか、物語を紡ぐ手段として力強い。

脚本や演出のバランス感

このミュージカルを語るうえで、漫画とミュージカルの相性の良さだったり、根底に流れる愛だったり、原作の骨太さだったりだけでなく、ミュージカルに落とし込む過程での演出の素晴らしさだったり、原作とのバランス感だったりに触れないわけにもいかない。

私は「お前はすでに死んでいる」は聞いたことがあったが北斗の拳のセリフだとは知らなかったレベルで北斗の拳のことは何も知らなかったけど、「あべし」「ひでぶ」に湧く観客席をみてこちらもなんか楽しかった。

原作のエッセンスはしっかり落とし込み、プログラムによると困ったら原作に立ち返るようにしていたそうだけれど、どうやら調べてみるとミュージカル化でそぎ落としたりキャラ変したりしている部分もあるようである。
その辺の絶妙なバランス感が絶妙で、原作未履修でも楽しめる仕上がりに。
ちょっと展開速かったけど。

歌にダンスにアクションに

ミュージカルの魅力といえば、歌とダンスによる想いのぶつけ合い、エネルギーに満ちているところだと個人的には思うが、本作にはそれらがすべて詰まっている。

ワイルドホーン氏の美しく力強い音楽、それを表現しきる俳優さんのスキル、ワイヤーアクションまで取り入れた北斗の拳ならではの激しいアクション…

どれも観客の熱を高める上でハイレベルすぎた。

さいごに

北斗の拳を全く知らないながらも、なんとなく筋肉ムキムキゴリゴリなイメージはあって、いったいどんな舞台になるのだろう?と不思議な気持ちで行ったけれど、とにかく想いが熱く、役者をはじめとして舞台から伝わってくるエネルギーが高くて楽しかった。

大貫さん以外にケンシロウができる俳優さんが思いつかないのだけれど、名作グランドミュージカルのように再演を重ねていろんな俳優が演じていろんな解釈ができるようになっていったらもっと面白いミュージカルになりそうだとも思っている。難しい。

とにかくアツい舞台でした!

*1:ヴィーナスの森